「ブランディング」という言葉を聞くと、複雑な戦略や高額な広告キャンペーンを思い浮かべ、自身の業務とは遠いものに感じる方も多いのではないでしょうか。しかし、ブランディングとは企業の「らしさ」を表現することです。今あなたが取り組んでいる業務こそが、その「らしさ」を形作っているかもしれません。
このコンテンツでは、ブランディングをもっと身近に感じてもらうために、さまざまな方々と企業の「らしさ」についてお話ししていきます。もっと気軽にブランディングについて話し合い、アイデアを共有してほしい。そして、さまざまなブランディングのエピソードを通じて「らしさのあした」を一緒に考えていけたら嬉しいです。
第一回目は、
ブランディングって実は身近で楽しい! 前編
- 坂本:
- 皆様、今日はどうぞよろしくお願いします。
話はじめる前に、そもそも今回のコンテンツの目的というかコンセプトは何なのかというのを最初にお伝えしたいと思います。
当社も近年『ブランディング支援』を本格化していく中で、ブランディングというワードに対し、敷居や意識が高いと言った苦手意識を持っている方が結構多いと感じたんですよね。
しかしながら、そういう方々も意識せずともブランディングに直結するような業務を行っていたりするので、そこに対する気づきを与えたい!もっとカジュアルにブランディングについて話ができるようになると、企業としても良い風土が築けるのでは?という仮説のもと、まずは自社のメンバーでその辺を話してみようという趣旨で集まっていただきました。 - 久保田:
- あぁ、確かに。僕は普通にブランディングというワードは使いたいけれど、この案件でブランディングって言えるの?とか、社内で何か恥ずかしいみたいな雰囲気を感じるときがあるから、それはなくしたいですね。もっと身近なものにしたい。
- 坂本:
- そうそう。ブランディングって実は身近にあるものだし、面白いものなんだよというのをやわらかくお伝えしていきたいと思うので、どうぞお付き合いよろしくお願いします。では、まず自己紹介から進めていこうかと思うんですけど...。
僕から、東京営業所アカウントグループの坂本です。営業を担当しています。皆さんが思い浮かべる営業職という感じの業務内容ですかね。お客さんと一番近い立ち位置で、課題を解決するお手伝いをさせていただいています。 - 小原:
- マーケティング部の小原です。新卒で印刷をメインとした営業として入社したのち、あらゆる制作物の全体を統括するディレクターを担当し、大阪メトロをはじめとしたブランディング案件にも携わりました。1年前からマーケティング部広報にて当社のPR業務を行っています。日々、自社のブランディングに奮闘中です。
- 久保田:
- 東京企画プロモーションGの久保田です。肩書はコミュニケーションプランナー兼コピーライターです。当社には去年中途で入社しました。キャリアとしてはコピーライターからスタートして、広く全体のプランニングまで領域を広げていきました。プロモーションプランを考えたり、企画が必要な仕事は割と何でも携わっています。
- 藤田:
- 関西企画プロモーションGの藤田です。肩書はクリエイティブディレクターです。久保田さんは主に言語化の部分の領域ですが、自分はデザイナーからのキャリアスタートなので、視覚化の面から領域を広げていく中でプランニングにも携わるようになりました。
写真化学ってどんな会社?
- 坂本:
- さっそくなんだけど、そもそもうちってどんな会社なのかなと...。
- 小原:
- 当社は、明治初年の創業当初からパッケージやグラフィックのデザインに携わり、現在はデジタルコンテンツや空間デザインにも幅を広げ、様々な媒体を通して、コミュニケーションツール全般のお手伝いをしています。近年では、マーケティング支援やブランディングというところにも力を入れてまして、施策を行った後の効果検証というところもさせていただくことで、企業の方のビジネスの成果にコミットできる伴走者、パートナー企業であるということを掲げながら事業を行っています。
- 坂本:
- ちなみに藤田さんが写真化学のキャリアが一番長く、会社の変遷を見守って来たと思うのですが、印刷中心からWebや展示会といった領域を広げていく過程というのは、どういう背景だったのか改めて教えてもらっても良いですか?
- 藤田:
- 印刷物って何のために作っているかと言ったら、「伝える」という大きな目的がありますよね。その「伝える」手段というのが時代の変遷、世の中のニーズの移り変わりとともに多種多様になってきた。なので、我々の伝え方というのも印刷だけではなく、Web、動画、展示会というものに手を伸ばしていく中で、お客さんの声を聞きながら、課題や目指すべきゴールみたいなものを共有させてもらってきました。その中でマーケティングやブランディングというところに目を向けていこうと、この数年で変わってきたのかなと思いますね。
- 坂本:
- なるほど。非常にわかりやすい(笑)
- 久保田:
- 今まであまり疑問にも思わなかったし、説明もされていないので。今、とても腹落ちしました!
- 藤田:
- 印刷物は何のために作るのかというところですよね。結局、そこに立ち返ると今はもうそれだけではないという感じですね。
なぜブランディング支援を?
- 坂本:
- 当社は昨年「BRUNd.」(ブラン)というブランドの自走化を支援するサービスを立ち上げましたよね。印刷から他のコミュニケーションツールの制作はなんとなく「ものづくり」という観点では仕事の流れにそこまで乖離はない気がするんですが、これって、印刷やデザインなどと違って形のないものだし、何らかのソリューションだということは感じられるけど、イメージが湧きにくいところもあるなと思っていて。当社がそういう領域を事業としてしっかりやっていくのは結構チャレンジングなことだと思うのですが、どのような気づきからブランディングを支援する流れになったのか掘り下げたいなと。
- 小原:
- 初めて展示会に出展したことがきっかけになるんですかね?
- 藤田:
- そうですね。そもそも何で展示会に出展したんだというところから話さないと。
- 坂本:
- 僕が覚えている範囲でお話しますと、当時、印刷のプロジェクトチームがあったんですよ。そこでは月に一回、印刷物をしっかり受注するためにはどうすれば良いかという話をしていました。その中で、今のビジネスモデルになっているカタログをバシバシ刷っていくのは、どうも減っていくだろうと想像されていたんですよね。そこで、カタログだけに限らず、いろんな部分で印刷の受注を増やそうと動き出しました。その当時から色味の表現力や再現性が我々の強みだと理解していたので、そういった部分に対してのニーズはもっとあるんじゃないか?という仮説のもと出展した背景がありますね。
だから、出展を決めたタイミングはブランディング云々という文脈ではなくて、もっと印刷受注の幅を広げたいという考での展示会出展だったという感じですね。 - 藤田:
- 多分それは経営的な目線での理由だと思うんですけど。もう一つの理由として、やっぱり某ネット印刷系の台頭があったからですよね。コモディティに勝つには、価格を上回る価値提供という部分を、印刷というメディアにおいて打ち出していかないといけない。その時に安かろうじゃなくて、これまでも培ってきた印刷技術の中で、いかに価値を感じていただけるかというものをもっと我々が発信するという部分での展示会出展だったのかな。それがテーマでした。さっき坂本君が言ってくれたのは、収益化に関するところですよね。
- 坂本:
- そうですね。マネタイズ的な。
- 藤田:
- それも間違っていないですよ。ただ、お客さんに対してそれを言うわけにもいかない。なので、テーマとしては価値を見出す印刷技術を掲げていたと思うんですよね。それが、五感に訴える印刷、高品位印刷。その五感に訴える印刷技術というものが、受け取ったエンドユーザーにとっての体験価値となる。その体験価値ってブランディングだよね!というところに着地しました。僕らはもっとブランディングに目を向けてやっていくべきじゃないの?という気づきを与えられたターニングポイントだったのが、初回の展示会出展だったと思います。
- 坂本:
- 確か2020年のコロナになるかならないかギリギリのタイミングでしたよね。ブランディングに直結するであろうパッケージをメインに展示したいけど、事例もまだ少なかったので我々で仮想のブランドを考えて、こんなブランドならパッケージが良いだろうという内容の展示でしたね。
- 小原:
- そう言えば、当社の展示会ブースにお越しいただいて、ブランデイングをお手伝いさせていただくことになったお客様とお話する機会があって。当時、お客様がD2Cの新ブランドを立ち上げるというミッションの中で、ECサイトの構築ができるベンダーを探しに来たけれど、当社のパッケージをはじめとしたクリエイティブを展示している様子を見て、ブランドの価値を伝えることをトータルでサポートしてくれそうだと思って声をかけてくれたみたいです。
展示会でお会いしたお客様とお仕事をする中で、クリエイティブを評価していただくことが多くて嬉しかったです。それに、エンドユーザーの方に、自分が考えたパッケージが届いて、かわいい!うれしい!という反応を見たときに、やっぱりブランドのデザインはお客さんに与える影響がとても大きいんだなと実感してから、当社の可能性を感じるようになったんですよね。当社はデザインもできるし、企画もできる、それを届ける方法も作れるということで、担当者はもちろん世の中のエンドユーザーに対して価値が提供できているなと思い出して、その頃から自分の営業の目線が変わったなという感じですね。
- 久保田:
- なるほど。まさにそのクライアントは、うちのシーズがうまくニーズと合致した感じですね。具体的にはクリエイティブ面を評価してもらったのかな?
- 小原:
- はい!例えばパッケージでも、デザインとコストを考えて、サスティナブルな用紙と特色インキを使ったパッケージを提案したのですが、"写真化学さんのパッケージは、たった1色でも全然違う"とポジティブな意見をいただくこともありました。振り返るとやっぱりデザインとか表現力がとても大事なんだなと思いますね。でも、私の記憶ではこの頃社内から「デジタルマーケティング」という言葉をよく聞いた気がして。MAベンダーと協業してマーケティングツールを提案していた時期もありましたよね?若手だった私は、会社がどの方向に向うか分からないまま、営業しに行っちゃっていました...。
- 藤田:
- 試行錯誤していたけどね。これ余談だけど、MAツールを売りたいわけじゃなくて、クライアントがMAをはじめられて失敗される一番大きな原因は、コンテンツが続かないということなんですよ。それで、我々がクリエイティブで解決していこうというのが、そのときに掲げたテーマとしてありました。
- 小原:
- その周辺のプロモーションツールを受注したいと思っていたんですけど、メルマガとかそういうもの?
- 藤田:
- もちろんプロモーションツールというものもあると思うんだけど、コンテンツがないと続かないですよね。その企画とかデザインというものが、うちから寄与できるようにと当時は思っていました。
- 坂本:
- 確かに思い返すと、いろいろ試行錯誤していましたね...。懐かしさすらある(笑)。自分自身のブランディングに対する気づきとしては、この展示会出展自体で大きな気づきがあったというよりは、展示会を通して今までと系統が違うお客さんと話す機会が増えたんですよね。そういうお客さんと話す中で、商品自体はもちろんだけどそこに付随する様々なタッチポイントにブランドのフィロソフィーみたいなものをどこまで付加できるかみたいな話が出てきて、ブランディングって大事なんだと理解を深めていった感じですね。だから、展示会出展というよりは、その後お客さんと話すことで理解の解像度を上げていったような印象がありますね。
- 藤田:
- この数年の展示会の中で、お客さんの系統も変わってきていますよね。
- 坂本:
- 例えば、カタログ一つにしても、ブランディングと非常に密接に関わっているのではないかという我々の気づきですね。
- 藤田:
- 最初は印刷を出展するというパッケージを中心とした仮想ブランドで出展して、そこからお客さんの価値を向上させるような印刷物で受注に至ったというのは、何か事例はあったりしますかね?
- 小原:
- 坂本さん、いっぱいあるんじゃないですか?
- 坂本:
- いっぱいは無いけれど(笑)。DtoCのブランドで高価な日本酒を販売しているベンチャー企業があって、そこが販売しているお酒の梱包資材の中にストーリーを伝える冊子が入ってたんですよね。その会社の方と話して、いろいろ見させてもらった時に、あれ?これはもうちょっと良くできるなと思ったんですよ。そこで、試しに用紙の選定から印刷まで実際に刷って提案したら、とても褒めていただいて受注に至ったというのはありますね。
やっぱり、実際にデザインを見せたり、ブランドが伝えたいことを最適に表現する方法を提案できたりしたのは、印刷の知見があったからだと思っています。