らしさのあした ブランディングをもっと身近に

このコンテンツでは、企業の「らしさ」をテーマにさまざまな方と対話し、ブランディングをもっと身近に感じてもらうことを目指します。アイデアを共有しながら、「らしさのあした」を一緒に一緒に考えていければ嬉しいです。

第二回目となる今回は、創業100年超の老舗・大川硝子工業所の5代目・大川岳伸さんにお話をお聞きしました。

第二回目は、
タイトル: 【「伝えること」が「らしさ」を生み出す──ブランドの魅力を伝える力 3-1】

「伝えること」が「らしさ」を生み出す
──ブランドの魅力を伝える力 3-1

「伝えること」が「らしさ」を生み出す──ブランドの魅力を伝える力 3-1 01

① 老舗メーカーの方向転換

坂本:
「早速ですが、まずは大川硝子工業所がどんな会社なのかを教えてもらえますか。
大川:
大川硝子は創業1916年。来年で110年になるのですが、最初の60年間くらいはガラスびんメーカーとして製造業をメインとしていました。

最盛期は大型の工場を構えて、一日何十万本というびんを作っていたようです。ただ、宅地化が進んだことや、時代の流れでびんの需要にも少しずつ陰りが見え始めたこともあり、卸売業にシフトしていきました。それがちょうど自分の生まれる頃の話ですね。
「伝えること」が「らしさ」を生み出す──ブランドの魅力を伝える力 3-1 02
大川さん
坂本:
大川硝子工業所へ入社する前、ご自身の家業をどのように見ていましたか?
大川:
正直、何もわかっていなかったです(笑)。なんとなくガラスびんを取り扱ってるんだなっていうことくらいしか理解していませんでした。親からも「この会社を継ぎなさい」って言われなかったし、就職活動のときも選択肢に入れてなかったです。
坂本:
大学卒業後は飲食業界に就職されたんですよね?
大川:
はい。飲料メーカーと飲食店にそれぞれ数年ずつ務めました。業種は違うけど、かなりハードでしたね。飲食店のときは朝から朝まで、なんてことも。
坂本:
大川硝子工業所に入社してから、自社に対する印象は変わりましたか?
大川:
徐々にですけど「この会社、そんなに上手くいってないのかも」って感じるようになりました。大口の仕入先、取引先の倒産が続いたりして、自分の給料も滞ったりするようになって。それまでは他人事のように接してきて、言われたことだけをやっていたんですけど、これはもう少し能動的に動かないとダメなんじゃないかって思うようになりました。
坂本:
なるほど。それは確かに自分事として考えるきっかけになりますね。
「伝えること」が「らしさ」を生み出す──ブランドの魅力を伝える力 3-1 03
写真化学坂本
大川:
その頃、趣味でDJをやっていたんですけど、そこで繋がったDJ仲間の中には、同じくらいの年齢でフリーランスとして生計を立てている人もいて。自分で仕事を取ってきて、仲間たちで回していく。その姿勢にすごく憧れたんですね。でも、よく考えれば、自分の会社でも同じような動きはできるんじゃないかって思ったんです。
坂本:
自分が働いている会社を変えることが出来ないと思ってる人も多いと思うんですよね。確かに規模感や風土もあるかとは思うんですが、現場から変えていける可能性があることは読まれている方にもお伝えしたいですね。時代の流れ的にも夢物語でもなくなってきましたし。
入社当時は大川硝子工業所でどのようなお仕事をされていたんですか?
大川:
卸売メインだったので、注文を取りまとめたり、倉庫番のようなこともやっていました。で、ちょうどやる気が出てきたタイミングで気づいたんですよね、「この会社、営業がいなくない?」って。

取引先とは社長である父が主にやり取りをしていましたけど、営業っていう感じではないし、そもそも「営業部」がない。そりゃ売上は上がらないよねと(笑)
「伝えること」が「らしさ」を生み出す──ブランドの魅力を伝える力 3-1 04
坂本:
重大な気づきですね(笑)

これまでの資産を有効活用したリブランディング

坂本:
その流れで大川さん自身が営業的役割を果たしていくかと思うのですが、営業するためには自社の特徴、強みなどを深く理解する必要がありますよね。
大川:
おっしゃるとおりで、そのときに初めてこの会社についてきちんと考え始めました。うちは元メーカーとしての強みもあるけど、それって生活者には伝わりづらい。広く営業していくためには、もっとわかりやすい自社商品が必要なんじゃないかって。
坂本:
いわゆる看板商品ですね。
大川:
ただ、いちから新しいガラスびんを作るのって、すごくお金がかかるんです。当然、見切り発車の企画にそんな予算はつけられない。そこはストーリーみたいな部分で付加価値をつけるしかないなと。たまたま祖父の時代に雑貨のブランドラインが立ち上がって、細々と作り続けてはいたんですけど、それが大手珈琲チェーンさんの全国展開などと重なり、すこし需要が増えてきて。パッケージ(デザイン)に手を入れるだけなら、予算的にもできるかなって思って、リブランディングしたのが「ファミリア」シリーズです。
坂本:
なるほど。パッケージを変えることで、より商品の魅力がちゃんと伝わるようになったイメージですかね。
リブランディングって少し大げさな聞こえちゃう部分もありますが、パッケージというか伝え方を変えることはブランドにとっては転換点ですからね。
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※ファミリアシリーズ HPより引用
大川:
たしかにその時期くらいから、ある種マーケットイン的な考え方を取り入れ始めたし、その中でどうやって自分たちらしさを出すか、っていうことを意識し出したんだと思います。
坂本:
同時期に、ロックバンド・ユニコーンの公式グッズとして採用された「おこのみソースポット」も企画されたんですよね。
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大川:
「ファミリア」と並行するような感じで、自分で正面から営業しました。昔から大好きなバンドだったし、ちょうど再結成のニュースが流れてきて。彼らは広島出身で、広島といえばお好み焼き、お好み焼きといえばおたふくソース......という感じで、ソースポッドのびんを作ったら面白いんじゃないかって。バンドのツアーグッズってTシャツやタオルなどの定番アイテムばかりだし、当時のファン層も40代くらいの女性が多く、キッチンツールとしてもウケがいいのでは、と。

当時、送り先もよくわからずメールを送ったのに、バンドの担当の方が真摯に対応してくれました。結果、ツアーの途中なのに導入してくれることになり、追加再生産が決まるくらいファンの方々にも喜んでもらえました。
坂本:
大川さんだからこそ実現できた事例ですよね。バンドを好きじゃなかったらそこまで解像度高くグッズを買ってる方の気持ちを理解できないですから。
しかもなかなかアーティストグッズでキッチンツールって無いですもんね。面白い!

続く...

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