らしさのあした ブランディングをもっと身近に

ブランディングをもっと身近に感じてもらうために、さまざまな方と企業の「らしさ」についてお話しする『らしさのあした』。

前回に引き続き大川硝子工業所の大川岳伸さんとの対談をお届けいたします。
コミュニケーションツールの考え方や、成功に至るまでの失敗体験などを語っていただきました。

「伝えること」が「らしさ」を生み出す
──ブランドの魅力を伝える力 3-2

「伝えること」が「らしさ」を生み出す──ブランドの魅力を伝える力 3-2 01

① ビジュアル面の刷新で実感したもの

坂本:
あと、大川硝子工業所さんはホームページやInstagramなど、ビジュアル面にも力を入れているのが印象的で。いわゆるこういった製造業、卸売業としては珍しいことであり、それが独自の強みにも繋がっている気がします。
「伝えること」が「らしさ」を生み出す──ブランドの魅力を伝える力 3-2 02
HPより引用(https://okawaglass.com/
大川:
ありがとうございます。でも、最初は社内を説得するのが大変だったんです(笑)。当時、すでにお問い合わせフォームも設置されているようなホームページを持つ同業他社さんとかもいたのに、うちはそれすらなくて。当然新規の取引先などはなかなか作れない状態だったんです。

そこで「いざホームページを作ろう」ってなったときに、「せっかくなら他社と差別化できた方がいいよね」「いわゆる会社然としてない方がいいんじゃない?」という話になって。これもDJ仲間のデザイナーにお願いしたのですが、最初からポップな感じにデザインしてもらいました。
「伝えること」が「らしさ」を生み出す──ブランドの魅力を伝える力 3-2 03
HPより引用(https://okawaglass.com/
坂本:
実際にホームページを作成してみて、何か効果を感じましたか?
大川:
売上がバーンと増えたわけではないけど、実際に仕事は徐々に増えていきましたね。うちみたいな昔ながらの問屋としては、仕入れでもない部分(デザインなど)にコストをかけるのってかなり抵抗があったんですけど、実際にホームページを作ってみてそういった社内の意識も変わっていったと思います。新しいガラスびんの金型作るよりは全然安いし、長期的にみればコスパのいい販促ツールになるなと。
坂本:
Instagramの運用も早い段階からやられていましたよね。
「伝えること」が「らしさ」を生み出す──ブランドの魅力を伝える力 3-2 04
大川硝子工業所 Instagram
大川:
当時はまだそんなに企業のInstagramアカウントとかがない時代からやっていましたね。それこそガラスびんの会社でアカウント持ってるところなんてひとつもなかったんじゃないかな。でも、そのアカウントを見て、キュレーションサイトに取り上げてもらったり、生活雑貨を扱う大手小売企業のバイヤーから連絡をもらって、 取引が始まったりしました。

レストランでもお店の外装、内装、雰囲気が料理の味にも影響するじゃないですか。洋服でも、取り扱っているアイテムがよくても、お店自体がお洒落じゃないと魅力が伝わらない。やっぱりそういう部分は強く意識するようになりましたね。
坂本:
伝え方は本当に大事ですよね。知ってもらった際に印象に残るのって雰囲気のような言語化しにくい部分が大半な気がしていて、最初から伝えることの本質が理解されるのって難しい。だからこそもっと知りたくなるような伝え方はとても大切ですね。

失敗体験と、そこからの挽回

坂本:
少し話しづらいかもしれませんが、逆に失敗体験などもお聞きしたいです。
大川:
いっぱいありますよ。それこそ「ファミリア」の前に、自分で初めて企画した商品があるのですが、これが全く売れなかった......。当時、メイソンジャーが流行っていたので、 びんは既製品を使いつつ、キャップだけオリジナルで作ってみようと。メイソンジャーは海外製でキャップはブリキ(鉄)なんですよね。それを日本国内で、ステンレス度の高い金属で作れば、錆びにくいしクオリティも高く、人気出るんじゃないかって。でも、そんなに甘くはなかったです(笑)。

※メイソンジャー:アメリカ発祥の密閉できるガラス製保存容器。ねじ式の金属フタとゴム付きの内フタが特徴で、食品の保存や瓶詰めに適しています

「伝えること」が「らしさ」を生み出す──ブランドの魅力を伝える力 3-2 05
坂本:
なるほど......。作り手には理解されるかと思いますが、生活者にはなかなか伝わりにくい部分かもしれませんね。
大川:
それもあるんですけど、その前に、そもそも当時のうちの会社にはそういったキッチン用品や雑貨として卸す取引先がほぼなかったんです。当時はいかに新しい商品を作るか、ということに躍起になっていたのですが、たとえ良いものが作れても、そこにストーリーや戦略、販路の準備がなければ売れないんだなということを痛感しました。
坂本:
所謂マーケティング的な視点が欠けていたと。
大川:
そうですね。ただ、実は後から少しだけ挽回できたんです。在庫を大量に抱えることになってしまったので、なんとかしなければならない。それでストローを挿せる穴を開けたキャップを作ったんですけど、これも全然売れない。どうしようかなぁって考えていたときに、びんに紐や毛糸を入れて、この穴から取り出せたら便利なんじゃないかって思ったんです。
「伝えること」が「らしさ」を生み出す──ブランドの魅力を伝える力 3-2 06
ただ、もう見切り発車はできないから、今度は慎重に(笑)、編み物をやっている友人に聞き込みをしました。そしたら、北欧には毛糸を保管するヤーンボールという民芸品があるということがわかって。比較的高価なものが多いヤーンボールと違って、びんならお手頃だし場所も取らないし、いけるんじゃないかなって。そうしたらとある小さいお店が興味を持ってくれて、製品化したら売れたんです。編み物業界で今でいうちょっとしたバズを巻き起こしたんです。
「伝えること」が「らしさ」を生み出す──ブランドの魅力を伝える力 3-2 07
引用:大川硝子工業所 Facebook
坂本:
うまく行かなかった最初のアイデアを方向転換して、商品とニーズが合致するポイントを新たに見つけたことが凄いです...!
これは自戒の念も込めているのですが、企画を考える立場でいうと最初のアイデアを過信してしまう気持ちがあるので、そうやってきちんと方向転換できたことは素晴らしいですね。
大川:
この挽回で勢いづいて、後のユニコーンや「ファミリア」の企画へと繋がっていったので最初の成功体験かもしれません。

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