
ブランディングをもっと身近に感じてもらうために、さまざまな方と企業の「らしさ」についてお話しする『らしさのあした』。
前編に引き続き、JAL Agriportの永易俊さんとの対談をお届けします。ブランド拡張へ挑戦される中での思いや苦労についてお話しいただきました。
強いブランドほど、ゼロから始められない
- JAL発 農業事業のリアル 中編
既存ブランドを活用する責任
- 坂本:
- 永易さんが思うJALらしさって何でしょうか?
- 永易:
- そうですね。1つは日本らしさ、でしょうか。おもてなしの心から生まれる、安心、安全、などが思い浮かびます。
- よくお客様から「海外で『鶴丸』を見たら安心する」というコメントをいただけます。それはJALの、鶴丸というひとつの資産ですね。
それに観光農園で予約時に応えていただくアンケートでも、「JALだから」選んだっていう回答は多いです。「JALが好きだから」「JALなら間違いない」という理由で選んでいただけます。 - 坂本:
- そこはさすがのブランド力ですね。
- 永易:
- その反面、大きな責任も感じています。お客様が「JALグループだからこその品質」を期待されているのを感じるからこそ、その信頼を裏切るわけにはいきません。
JAL Agriportとしても、その信頼やブランド力のおかげで集客できている面が大きいので、常に身の引き締まる思いで取り組んでいます。

- 坂本:
- 確かに、期待値がはね上がるのは、既存ブランドの力を使うこととのトレードオフだとも言えますね。
でも、JALブランドが長年に渡って築いた顧客との信頼関係によって、新規事業でもすでに好感を持たれた状態からスタートできる。これはうまく使いこなせば、強力な強みになると思います。
新規ブランドにとって、「感情移入される」ことが最初のハードルなので。
支えてくれた成田へ、JALから"恩返し"
- 坂本:
- 次に地方振興を目指されている観点からお聞きしたいのですが、「成田らしさ」で思い浮かべるものはありますか?
- 永易:
- そうですね、成田らしさ...。なんでしょう。ご覧の通り、田園風景が広がっているのは成田らしさと言えるでしょうか。
もともと関西で勤めていたので、関西と関東で風景が全然違うと感じます。こっちは関東平野がありますが、関西って大きな平野があまりない。山に遮られずに見渡す限り農園、農地っていうのはこっちならではかな、と。

- 坂本:
- 僕は茨城生まれで、結構こういう牧歌的な場所で育ってきた人間なので、逆に慣れ親しんできた方かもしれません。
今日訪れて感じたのですが、空港があるっていうのはひとつ、地元との大きな差別要因な気がします。田舎って、ともすれば"閉鎖的"というマイナスイメージも持たれがちだと思います。視界を遮るマンションや商業施設がない感じが、他とつながっていない感じを生んでいるというか...。
一方で成田はなんか、"開かれてる"って印象があります。空港から人が来ることが前提なことで、人を受け入れられる、器の広い雰囲気みたいなものがあるのかなと。 - 永易:
- 確かに。国際空港を起点としたブランディングは、成田じゃないとできないことかもしれないですね。
- JALとしては、成田という土地にこれまで支えてきてくれた"恩返し"をしたい、という思いでいます。事業スタートに成田を選んだのは、そのためです。近年「羽田シフト」と言われる流れがある中で、成田ならではの可能性を改めて形にしたいと考えています。
例えば、私たちが運営するレストランでは、食材の70から80%程度に、千葉県産のものを使用しています。
あと、このあたりは米農家さんも多いのですが、夏の田植えが終わってから秋の収穫までの間、弊社の農園に働きに来てくれている方もいます。そうやって柔軟にダブルワークができるような形をとっています。 - 坂本:
- 僕の実家の周りも米農家の方は多いですが、そういう働き方ができるのはすごくいいですね。スキルを活かして、所得向上に繋がって。
- 永易:
- はい。弊社としてもご協力いただけるのは、すごく助かっています。
農産物ブランドを立ち上げる挑戦へ
- 永易:
- JAL Agriportは、今まさにブランド戦略を描くフェーズにいます。商品は少しずつ流通し始めていますが、私たちが理想とする売り場を確立するには、まだ課題もあります。
「JAL」という看板があるからといって、果物そのものの魅力が自動的に伝わるわけではない、という難しさを日々実感しているところです。
- 坂本:
- なるほど。認知度が高くても、そこはまた別のアプローチが必要なんですね。
- 永易:
- はい。
もちろん「あ、JALさんなんですね」と興味を持っていただけることは多く、最初のドアを開ける面でのアドバンテージは非常に大きいです。ですが、お客様に選ばれ、長く愛されるためには「JALブランドだから」という安心感にプラスして、「このいちごだからこその付加価値」が必要です。
そこが伴って初めて、お店の棚に自信を持って置いていただけるのだと感じています。 - 坂本:
- 素晴らしいブランド力があるからこそ、農産物としての純粋な品質や価値の提案が、さらに重要になってくるわけですね。
それに僕、食品メーカーさんとよくお仕事するのでものすごく共感するんですけど、棚を取る難しさ。本当に苦労させられます。特に攻める側である新興メーカーさんは、常に他社の棚を奪わなくてはいけないゼロサムゲームなので。

後編に続く
(撮影 Hide Watanabe)

