らしさのあした ブランディングをもっと身近に

ブランディングをもっと身近に感じてもらうために、さまざまな方と企業の「らしさ」についてお話しする『らしさのあした』。

JAL Agriportの永易俊さんとの対談後編をお届けします。新しいブランドとして成長するために行なっていることや、今後の展望についてお聞きしました。

前編から読む >

強いブランドほど、ゼロから始められない
- JAL発 農業事業のリアル 後編

強いブランドほど、ゼロから始められない - JAL発 農業事業のリアル 後編 01
(左 弊社 坂本 右 永易さん)

検証してつくる「高くてもほしい」

永易:
私たちは、価格競争をするような「安価ないちご」を輸出していくことは考えていません。あくまで日本の高い技術で育てられた、高付加価値な価格帯のいちごに絞って輸出をしていきたいと考えています。

現地のバイヤーの方からは「クオリティや味は申し分ない。あとは価格さえ合えばいつでも仕入れたい」と言っていただくことも多いです。だからこそ、「この価格でも欲しい」と指名買いしていただけるようなブランディングが重要であり、そこが今まさに挑戦している難しい部分ですね。
強いブランドほど、ゼロから始められない - JAL発 農業事業のリアル 後編 01
坂本:
「高くてもほしくなる」理由を作るためにされていることはありますか?
永易:
マレーシアでは、市場リサーチを兼ねたイベントを行いましたね。
今回御社と一緒に作ったパッケージと、もともと使っていたパッケージの比較、あとはいちごの品種も複数比較して、投票してもらいました。マレーシアの人たちにはこちらが受けましたというエビデンスを作るのが目的です。
強いブランドほど、ゼロから始められない - JAL発 農業事業のリアル 後編 02
マレーシアで行なったプロモーションイベントの様子。弊社デザインが人気
作ったパッケージは、今期はタイ、マレーシア、ニューヨークへの輸出に使いました。「パッケージがいいね」という評価を各所からいただいています。
坂本:
嬉しいですね。

制作事例はこちらをクリック

永易:
投票イベントでは、今回作ったパッケージの方をダントツで選んでいただきました。海外の方にも認めてもらえるのだと実感しましたね。
坂本:
先ほどおっしゃっていた「JALらしさ」、そして日本らしさが体現できるものに仕上がったといえそうでしょうか。どんな表現を意識したのでしょうか?
永易:
デザインで意識したのは、シンプルさでしょうか。
ごちゃごちゃしてないというか、余計なものはそぎ落とすというのは、常に意識するようにしました。
強いブランドほど、ゼロから始められない - JAL発 農業事業のリアル 後編 03
坂本:
いいですね。
何かを作るにあたって、積極的で前向きなお客さんほど「あれも伝えたい、これも伝えたい」とたくさん話していただけるんですけど。やっぱりひとつ、「一番伝えたいことは何か?」を研ぎ澄ませる重要性は常々感じています。結果的にそちらの方が「伝える」ことができるので。
「伝える」プロフェッショナルである僕らこそ、気をつけたい部分です。

「鶴丸」の責任を価値に変える

坂本:
最後に、いちごの拡販における今後の展望を、可能な限りで教えていただけますか?
永易:
今回制作したパッケージにも「鶴丸」のロゴマークが入っていますが、そのブランドを背負う責任感を、私たちはポジティブな価値として活用したいと考えています。
坂本:
というと?
強いブランドほど、ゼロから始められない - JAL発 農業事業のリアル 後編 04
JAL Agriportの看板は、JALブランドとしての責任を示す
永易:
JAL Agriportでは自社生産のいちごだけでなく、地域の契約農家様が育てたいちごも輸出しています。これまでも、私たちの想いや方向性に共感し、高品質ないちごを追求されている農家様と協力してきました。

今後は、その確かな品質へのこだわりを一つの「目指すべき基準」として明確に共有していくことで、同じ志を持ち、高いクオリティを維持されている農家様とのパートナーシップをさらに広げ、仲間を増やしていきたいと考えています。

将来的には、このパッケージに入っていること自体が「最高品質の証」になればと思っています。

一方的な評価ではなく、農家さんと私たちがお互いにクオリティを認め合った、いわば『JAL Agriport認証』です。この認証を得ることで、農家さんのこだわりが正当に評価され、国内外への販路拡大や所得向上など、たくさんのメリットを還元できる仕組みにしていきたい。
そうして、ブランドとしての価値が世界に広く認知されるサイクルを、仲間である農家さんと一緒に築いていきたいですね。
強いブランドほど、ゼロから始められない - JAL発 農業事業のリアル 後編 05
坂本:
なるほど。
ブランドって、家畜牛を飼う中でどこが育てたかが分かる焼印が発祥って言われているんですが、それに近いものを感じました。
永易:
いちごがあって、ぶどうがあって...という風に、いろんな農産物に展開されていくのが理想です。
他にも、完全オリジナル品種とかも効果的かもしれませんね。世の中に出ていない、誰も食べたことがない、JALが作った品種があると、いいかな。
坂本:
確かに。それだけでちょっと食べてみたいっていう気持ちになりますね。どんな味だろうと興味が湧く。
強いブランドほど、ゼロから始められない - JAL発 農業事業のリアル 後編 06
永易:
もちろん大前提として美味しくないといけないというのはありますが。
ただ日本でも有名なあまおうとか紅ほっぺなどのブランドは、海外でも広まっているので。そういう品種を持っていくと、価格勝負になって違いが生み出せない。
そうなると、白いいちごとかピンクのいちごとか、新しい品種を作るというのは、ひとつ武器にはなるかもしれません。
ちょっと遠い話にはなりますが、夢はいっぱいあります(笑)。
坂本:
本日はお話させていただきありがとうございました!
弊社は、新しいことに挑戦するときのデザインはもちろん、それだけではなく「何を伝えるか?」「どのように表現するか?」という企画からお手伝いできます。今後もご相談いただけたら嬉しいです。
永易:
そうですね。そこから入っていただけるのは、私としてもありがたいです。こちらこそ、ありがとうございました!
強いブランドほど、ゼロから始められない - JAL発 農業事業のリアル 後編 07

あとがき

既存ブランドは、新規事業にとって強力な資産である一方、その力に頼るだけでは、築いてきた大切なブランド価値を損なうリスクもあります。
JAL Agriport様の取り組みから見えてきたのは、ブランドとは、期待と責任を負いながら、商品やサービスを通じて積み上げていくものだという現実でした。商品価値はもちろんのこと、地域や産業、人との関係性を長く育てることで完成します。
既存ブランドがあるから選ばれる場面もあれば、通用しにくい場面もある。だからこそ、入念にリサーチしながら、価格ではなく価値で選ばれる理由を作る。そのプロセスが、ブランドを進化させていきます。
既存ブランドを活かした新規事業は、その信頼を未来にどうやって更新していくかも問われる挑戦です。JAL Agriport様の現在地は、その道の途中。
そこには、多くのブランドが向き合うリアルが詰まっていました。このインタビューが、新規事業担当者の方にとって、何かのヒントになれば幸いです。



(撮影 Hide Watanabe)

 

中編はこちら

サービスを詳しく知りたい方はこちら

BRUNd. 特設サイトを見てみる
BRUNd. 特設サイトを見てみる